日本の大学キャンパスの多くは、欧米のキャンパスの美しさに比べ、世界水準の知の拠点を目指すにしては貧しい状況にある。その要因は、施設の量的な拡大に重点が置かれ、屋外環境も含む「群」としての環境づくりや、豊かな環境を持続的に維持するマネジメントの視点が欠けてきたことにある。キャンパスが「知のコモンズ」として大学の本質である思索と議論を促すような空間をもつためには、人が留まりたくなるような空間のしつらえや、緑豊かな美しい屋外環境がつねに保たれていることが重要である。もちろん、最先端の研究を行うための高度な実験設備や、多くの国内外の学生や研究者を受け入れる宿舎を持つことも、『世界の誰もが選びたくなるキャンパス』の必要条件ではあるが、崇高な理念を体感できる美しいキャンパス空間をもつことも、世界水準の大学と認められる十分条件であると考える。一方、地球レベルでの環境問題は人類の将来の生存と繁栄にとって緊急かつ重要な課題であり、本学も 「名古屋大学環境方針」において、『人類が築きあげてきた多様な文化や価値観を認め、次世代のために真に尊重すべきことは何かを考え、持続可能な社会の実現に貢献する。』ことを基本理念としている。すなわち、教育と研究を通じて持続可能な社会づくりに貢献すると同時に、自らのキャンパスが低環境負荷社会サステイナブルな空間モデルとなることが求められている。そこで、CMP2022では「世界水準の美しさをもつサステイナブルキャンパスへの創造的再生」を基本目標とし、次項に挙げる3つの計画コンセプトを掲げ、「キャンパスマネジメント」により計画の実行を目指す。サステイナブルキャンパスとは、地球環境に配慮したキャンパスであるだけではなく、社会的、経済的にも、長期にわたって持続可能な仕組みをもつキャンパスである。持続的に継承・発展すべきものは、この土地の歴史であり、蓄積されてきた「知」である。これまでに先人たちが築き上げた資産を尊重し、新たな技術や知恵を最大限活用して、大学の機能強化や経営に貢献する良好な教育・研究環境を、持続的に維持・ 更新することが可能なキャンパスの創造的再生が目標である。CMP2010では、30年後を見据えた計画コンセプトを定め、目指すべき理想像を示すフレームワークプランと、6年の中期目標期間に実施すべきアクションプランによる 2 段構えの計画を策定した。その後、6年を経た CMP2016、そして、本CMP2022においても、基本的に長期的な目標は継続すべきであると考え、以下の 3 つの計画コンセプトを発展的に踏襲する。何より重要な目標は、学術憲章にも謳われている「自由闊達な学風」を維持し、卓越した教育研究成果を挙げ得る環境としてのキャンパスの実現である。『世界屈指の研究大学への成長』を支え得る、安全で機能的な基盤であるとともに、構成員にとってかけがえのない体験の礎となる美しく豊かなキャンパスの実現を目指す。特に、自由闊達な教育研究風土を助長し「知のコモンズ」を体感できる屋内外の交流スペースの充実を図る。0101|自由闊達な教育研究風土の基盤となるキャンパス1-3-1 世界水準のサステイナブルキャンパスへの『創造的再生』1-3-2 3つの計画コンセプト1-3 キャンパスマスタープラン2022のコンセプト
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