地球温暖化対策としての「パリ協定」を受け、日本政府も2050年にカーボンニュートラルを目指すことを宣言、2030年に温室効果ガス46%(2013年比)削減を打ち出し、矢継ぎ早に関連政策が出され、地域や産業界を含め喫緊の課題としてカーボンニュートラルに向けた動きが活発化している。2021年度から始まった「カーボンニュートラルに貢献する大学等コアリション」でも、研究、人材育成や地域のゼロカーボ ン化に対して大学の貢献に期待が高まっている。また、大学・キャンパスは地域のなかでの大きな CO2排出事業者でもあり、これまでの CMPではエネルギー原単位※1 の削減を目標としてきたが、今後は CO2排出総量の削減が求められる。また、大学が自ら開発した技術を実証実験する場としてキャンパスを活用するなど、カーボンニュートラルを見据え社会を先導する大学の姿勢、キャンパスのあり方が求められる。CMP2016で策定された計画は、着実に実行に移されており、学外関係者や学内各部局におけるキャンパスマスタープランの重要性の理解にもつながっている。一方で、必ずしも達成度が十分でない事項もある。ここでは、CMP2016の点検評価からCMP2022における課題を抽出する。緑地・生態系保全については方針に沿って進められてきたが、鏡ヶ池と周辺の整備、鶴舞の緑化率など課題が残っている。交通・駐車場計画については、鶴舞や大幸で整備が進み達成度が向上したものの、東山における外周部への駐車場配置と歩行者専用道路化、キャンパスエントランスについて進捗していない。エネルギー・インフラ計画については省エネ建築の整備のハード面、コミッショニングなどのソフト面で順次進められてきたが、自然エネルギーの導入やオフサイトでの取り組みが十分に実現していない。また、各キャンパスに共通するキャンパス利用の基本方針については、部局を超えた利用や一時移転スペースの集約など、フレキシブルな空間利用が実現しておらず、増加し続ける施設によるライフサイクルコスト※2増大や緑地の減少、建て詰まりといった問題も大きくなっている。交流スペース、交通計画、継続的な教育研究施設の整備計画で達成度が低くなっている。交流スペースについては、多くの課題を解決するであろう東海機構プラットフォームの計画に着手したものの、キャンパス全体における整備についてはあまり進捗していない。交通計画については、鶴舞、大幸における駐車場整備が進展したものの、東山における歩行者専用道路の整備や、関連した駐車場・駐輪場・バイクプールの整備など課題が残る。また、継続的な教育研究施設の整備計画は、東山や鶴舞に共通して、小規模施設の集約が十分に実現せず、建て詰まりや空地の確保が課題である。さらに、街路樹整備や緑地の維持管理・活用や生態系の情報収集(緑地の管理や緑地生態系)、サークル施設やアスレチック施設など(福利厚生)の課題が残り、評価を下げている。※1 エネルギー原単位:「原油換算エネルギー使用量」を「生産数量その他のエネルギー使用量と密接な関係をもつ値」で除した値※2 ライフサイクルコスト:構造物などの企画、設計に始まり、竣工、運用を経て、修繕、耐用年数の経過により解体処分するまでを建物の生涯と定義して、その全期間に要する費用を意味する0064|カーボンニュートラルを見据えたキャンパス1|フレームワークプラン2|アクションプラン1-2-2 キャンパスマスタープラン2016の点検評価
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