キャンパスマスタープラン2022
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「コミッショニング」とは、建築物やその設備などについて、企画から設計・施工・運用までの各段階において、第三者による中立的な立場から設計・施工内容を検証し、発注者への助言を行い、受け渡し時には機能性能試験を実施して、設備の適正な運転、保守が可能な状態であることを確認するものである。建築分野(意匠/構造)、設備分野(機械/電気)にまたがるトータルビルコミッショニングを、企画から運用に至るライフサイクルにおいて実施した国内の先駆的事例が名古屋大学研究所共同館Iである。本学では2011年以降複数の施設で採用してきたが、トータルビルコミッショニングの実践には多くの時間と労力が必要となる。そこで、施設の特徴に合わせて簡略・最適化した名古屋大学型のコミッショニングを採用する。特に、1.企画から実施設計発注までの期間が極めて短い国立大学のタイムスケジュールを勘案し、企画フェーズの最終段階に施設統括部と施設・環境計画推進室の主導で基本計画・基本設計のフェーズを開始させる点、2 .発注者/検証者ともに学内関係者であることからキャンパスマネジメントグループ内でその立場を分離明確化しつつコミッショニングチーム(CMT)を構成し、施設の特徴にあわせて検証事項を特化 し、プロセスを簡略化している点が特徴といえる。コミッショニング対象となるのは以下の施設である。■規模が2,000m²以上の施設では、原則として以下の❶〜❹に至る名古屋大学型コミッショニングのプロセス  を導入し、立地/規模/用途に応じてコミッショニングの重点項目を特化する。 ■規模が2,000m²未満でプロセスS/A/B/Cに該当する立地の場合は、最低限のOwners Project Requirement (OPR)  と設計主旨文書を作成する。なお改修工事においては、既存施設の現状を踏まえ、必要な事項のみ定めるものと   する。• 発注者/利用者/検証者の連携体制を構築• 省エネルギー性能や建築空間に対する目標を文書化したOPRを発行• OPRと概算要求事項をもとに設計者の選定を行い、基本設計を開始• 発注者が実施設計を発注• 検証チームが性能検証計画書(簡易版)を発行• 設計者が設計根拠を整理し、基本設計を完了• 設計者が実施設計図とともに、外皮性能などの検証用資料を作成• 検証チームが実施設計を随時検証し、アドバイス• 設計者がOPRをもとにした設計主旨文書を作成• 発注者が施工を発注• OPRの内容によっては設計段階の消費エネルギーシミュレーションを実施• 施工者が施工図とともに検証用資料を作成• 検証チームが施工内容を随時検証し、アドバイス• 必要に応じた機能性能試験の実施(受け渡しフェーズ)0871|コミッショニングの概要と対象2|コミッショニングのプロセス❶ 企画・計画フェーズ❷ 設計フェーズ❸ 施工フェーズ4-3-2 名古屋大学型コミッショニングの実施

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